稲荷寺のパラレル少女
青いワンピースの少女
いつも閑散としている参堂は参拝客で賑わい、年のほとんどを休んでいる出店は客寄せの声を張り上げている。


日本三大稲荷のひとつと言われている岡山県岡山市に位置する最上稲荷。


そこは良介にとっていつもの遊び場だった。


徒歩5分ほどで行ける距離とか、広い参堂は小学5年生の良介にとって安全に走り回ることができる公園と同じだった。


しかしこの日、最上稲荷の様子はいつもと違っていた。


「すっげー。正月って感じだなぁ」


良介の隣で英也が関心したように呟いた。


英也も大輝も良介の同級生で、1年生の頃から仲がいい。


3人一緒になっていつもなにか悪巧みをしているので、まとめて怒られることも多かった。


そんな3人も、今日はいつも以上に浮き足立った気分だった。


周りを見回して見れば人人人。


華やかな着物に身を包んだ人。


長い参堂や階段を気にして飾り気のない運動靴で来ている人。


それは様々だが、その表情は一様にして明るかった。


笑顔の人々を見ていると3人も自然と笑顔になれる。


1月1日とはたいていの人間が笑顔で過ごせる日なのだと、最上稲荷近辺で育った良介は思っていた。


とはいえ、最上稲荷がここまでにぎわうのはなにも正月だけではない。


大きなイベントでいえば2月には豆まきがあるし7月には七夕、夏祭り大祭と、様々な催しごとがある。
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