稲荷寺のパラレル少女
「忘れられるって、どうして?」


どうにか話についていくため、良介は質問を重ねる。


「人から信仰心がなくなったから。神様も仏様も、悪魔もエンジェルも。この世界の人たちは信じていない」


「そうなんだ……」


良介だった神様や仏様を心の底から信じているわけじゃない。
 

だけど稲荷や狛犬のことを忘れたりしたことは1度もなかった。
 

この世界での信仰心は、良介がいる世界よりも遥かに薄くなっているということなんだろう。


「それで、ここからが本題なんだけど」


稲荷はもとの女の子の姿に戻り、仕切り直しをした。


「あなたをこの世界に連れてきたのは、こっちの世界でのあなたがピンチだからなの」


「ピンチ?」


「えぇ。どうにかこっちの世界のあなたを助けてあげてほしい」


自分がピンチだと聞かされてもピンと来ない。
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