稲荷寺のパラレル少女
家が近いし、遊び場にしていたからだ。


最上稲荷へ行くと言うと母親がお稲荷さんを作って持たせてくれたりもする。


良介はそれをお供えものにしていた。


「こっちの自分もお供えをしてたんだ……」


そう思うとなんだか少し嬉しくなった。


全く違うように見える世界でも、やはり少しずつ共通点はあるみたいだ。


そういえば、こっちの自分も膝に絆創膏をはっていたっけ。


そこも共通点だ。


良介はヒザの絆創膏を指先でなでた。


「こっちの世界で私は消え行く存在。そんな私を気にしてくれているあなたは、特別な存在なの」


そう言われるととても照れくさくて、頬が熱くなってしまってうつむいた。


稲荷はキツネだけれど、今は可愛い女の子の姿をしているから余計だ。


「そ、それなら君がこっちの世界の俺を助けてくれたらいいだろ?」


何気なく言った言葉だった。


稲荷が直接こちらの良介を助けてくれれば、パラレルワールドからつれてこられるような、回りくどいことはしなくてすんだはずだ。


しかし、稲荷は悲しそうに左右に首を振った。
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