稲荷寺のパラレル少女
こっちの世界では学校や博物館と言った大きな建物以外はすべてビルの中に入っているようなので、良介の家族もビルのどこかに暮らしているはずだ。


お父さんもお母さんも、それからおばあちゃんも。


こっちの世界ではどんな風になってるんだろう?


1度見てみたいかも。


そう思ったときだった。


「来たわ」


稲荷に言われて我に返った。


植木の隙間から確認してみると道路の置くからとぼとぼと1人で歩いてくる自分の姿を見つけた。


念のために良介はキツネのお面をかぶった。


イジメから助けるということは、目の前に飛び出していくこともあるかもしれない。


こちらの世界の自分は背中を丸め、ランドセルがとても重たそうに見える歩き方をしている。


もう少し背中を伸ばして歩けないのかと、見ていてガッカリしてしまいそうになるが、それもこれもイジメが原因のはずだ。


その原因を突き止めてとめさせるのが自分の役目。


良介は気を取り直すように大きく息を吸い込んだ。
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