稲荷寺のパラレル少女
足音が聞こえてきたことに驚き視線をこちらへ向ける自分。


英也と大輝じゃなかったことに安堵しつつも、キツネのお面をつけた良介に怪訝そうな表情を浮かべた。


邪魔にならないよう、こちらの自分が一歩横へよける。


そのしぐさひとつにとっても自分とはかけ離れているように感じられた。


ビクついている自分を見るのは腹立たしくて、そして悲しかった。


良介は迷うことなく自分の前まで歩くと足を止めた。


正面から向き合う形になり、こっちの世界の自分がたじろぐのがわかった。


「だ、誰?」


英也たちの差し金だと思っているのか、警戒心をあらわにしている。


「英也たちの友達だよ」


そう答えると、自分は一歩後ずさりをした。
 

やっぱり英也の仲間なんだ。


今日は2人ではなく、この仮面をつけたヤツも入れて3人にイジメられるんだ。


そんな心の声が聞こえてくるようだった。


「英也と大輝、来られなくなったみたいだよ」


良介はいつもよりも声のトーンを高くして言った。


できるだけ、こっちの自分が怖がらないように。
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