稲荷寺のパラレル少女
振り向くと英也と大輝が粘ついた笑みを浮かべて立っていた。


それはどう見ても良介のことをさげすんでいて、こんな風な顔を毎日見せられていたらどんな人でも精神的にまいってしまうと感じた。


こっちの良介が約束場所から逃げることができなかった理由も、わかる気がする。


そう思いながら、良介は体を反転させて2人に向き合った。


その瞬間カンカンカンと、踏み切りが下がってくる音が聞こえてきた。


まるで見計らったかのようなタイミングで電車が来るみたいだ。


しかし、このとき良介はその違和感に気がつかなかった。


どうして踏み切りが約束場所なのか。


どうしてこのタイミングで電車が来るのか。


目の前にいる2人に気を取られてしまっていた。


「用事ってなに?」


自分の声が踏み切りの警報音にかき消される。


2人がは何も言わずに距離を縮めてくる。


相変わらず顔には笑みを貼り付けていて、気味の悪さを感じて後ずさりをした。


良介の背中のすぐ後ろは線路だった。


「返事くらいしろよ」 
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