稲荷寺のパラレル少女
そこに寄りかかり、たこ焼きや焼きそばをほお張る人たちもいる。


屋台の広場は更に活気があり、「まいどあり!」「お待たせ」と言った声があちこちから聞こえてくる。


客寄せなんてしなくても、どの屋台も沢山の行列ができている。


3人は広間から参道へ入っていく手前で足を止めた。


ここがいつものスタート地点なのだ。


しかし、今はスタート地点に立っているだけで迷惑になっている。


行きかう参拝客に睨まれるたびに、良介はいたたまれない気分になった。


「準備はいいか?」


英也はいつものダッシュと同じようにクランチングスタートの体勢を取る。


さすがに、良介と大輝はそこまでできなかった。


体勢を低くして前方を睨みつける英也。


それをよけるように歩く参拝客。


見ているだけで申し訳なくなる。


「よーい」


それでも英也の掛け声に合わせて両腕に力をこめるくらいのことはした。


どうせ、走れないけれど。


「どん!」
< 4 / 106 >

この作品をシェア

pagetop