稲荷寺のパラレル少女
電車が近づいてくる音と良介の声が混ざり合う。


英也が口を開き、何かを言った。


しかし唇がグネグネと動くばかりで聞き取れなくて、良介は眉を寄せる。


「なんだって?」


聞き返した次の瞬間だった。


良介の体は2人に突き飛ばされて遮断機にぶつかっていた。


遮断機が大きく揺れる。


腰あたりにぶつかった痛みに顔をしかめて良介は2人をにらみつけた。


「なにすんだよ!」


叫び声をあげ、体勢を立て直そうとする。


しかし、体勢を立て直す前に更に体を押され、踏切内に倒れこんでしまった。


砂利に手をつき、痛みが駆け抜ける。


「っ」


声にならない声を上げて手のひらを見つめる。


とがった石が刺さり、血が滲んでいた。
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