稲荷寺のパラレル少女
「逃げて!!」


電車が目前まで迫ってきたとき、稲荷の声が聞こえてきてようやく我に返った。


ハッと目を見開き、次の瞬間には体を回転させて遮断機の外へと脱出していた。


その直後、ゴーッと風の音を響かせて電車が走りぬけていく。


想像以上の突風にキツネのお面が飛ばされてしまいそうになり、良介はそれを両手で抱きかかえて身を丸くした。


「大丈夫ですか!?」


顔を上げるとすでに電車は通りすぎていて、稲荷が隣にしゃがみこんでいた。


「あぁ……なんとか」


よろけながら立ち上がり、遮断機のあがった線路を見つめる。


あのスピードでぶつかっていたら、確実に命はなかっただろう。


今更ながら体が小刻みに震え始めた
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