稲荷寺のパラレル少女
☆☆☆

「この部屋で寝てください」


1時間ほどして稲荷に案内された部屋には、すでに布団が引かれた状態だった。


至れり尽くせりな世界になんだかキツネにつままれたような気分になる。


手のひらで布団を押して見ると、フワリとして心地いい。


さっきの座布団と同じ高級ベッドみたいな感覚がした。


その布団の心地よさに1人で感激していると、不意に稲荷があたまを下げてきた。


たたみに額が押し付けられている。


「きゅ、急にどうしたの?」


「ごめんなさい!」


「え?」


「突然なんの説明もなしに連れてきてしまって。あなたにはあなたの生活があったのに」


稲荷は本当に申し訳なさそうに言う。


それを見て、さっきスマホを操作していたところを見られたのだとわかった。
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