稲荷寺のパラレル少女
と思ったときにはすでに2人の姿は見えなくなっていた。


そんな、ずるい!


良介もすぐにわき道へ向かおうとするが、後ろを歩いていた若い女性から「ちょっと、ちゃんと歩いてよ」と文句を言われて、タイミングを失ってしまった。


これじゃ完全に良介の1人負けだ。


英也のやつ、最初からあっちの参堂を使うつもりだったな。


大輝のやつもうまく英也について行ってしまった。


さっきまで一番嫌そうな顔をしていたくせに、調子のいいやつだ。


面白くなくてチッと小さくしたうちをすれば、前を歩いていた男性が振り向いて睨んできた。


なんだよ、おもしろくないなぁ。


そう思っても、もう遅い。


良介の体は参拝客たちのよって邪魔され、横道へそれることもできずにのろのろと前へ進むしかなくなっていた。


これで俺の負けが確定だ。


ガックリと肩を落とす。


地面を見ると悲しそうに歩く自分の靴が見えた。


靴紐がほどけかけているが、少しずつでも進んでいるから立ち止まって直すことは難しい。
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