稲荷寺のパラレル少女
☆☆☆

「まるで獣みたいだった」


長い石段をあがりながら良介は呟く。


もうキツネのお面は外していた。


英也の上げたうなり声は人間のものじゃなかった。


「やっぱりあのモヤが関係しているのよ。じゃなきゃ人殺しなんてあんなに簡単にできるものじゃないもの」


稲荷の言葉に良介はうなづいた。


良介もそう思う。


だから今からもう一度、あの裏鬼門へ行ってみるつもりだった。


あのモヤの正体を掴むことができれば、英也と大輝を元に戻すことができるかもしれない。


外にあるグリーンに塗られた非常階段を上がりきった時、階段を上がってくる足音が聞こえてきて2人はまた貯水槽の影に身を隠した。


屋上のドアの開閉音が聞こえてきた後、そっと顔をのぞかせる。


そこにいたのは白いエプロンをつけ、三角巾を巻いた女性だった。
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