稲荷寺のパラレル少女
どうやら下の階のパン屋さんみたいだ。


屋上に干していたタオルやふきんを取り込みに来たみたいだ。


女性は鼻歌を歌いながらお店使う布類を洗濯籠に放り込んでいく。


と、その時。


女性が動きを止めて割れている岩へと視線を向けた。


岩の割れ目からは今も少しずつ黒いモヤが出てきていて、それは空気中に溶けていっているように見えた。


「あら、この岩割れていたっけ?」


首を傾げて岩に近づく女性。


良介は嫌な予感が胸によぎった。


あの岩に近づかないほうがいいんじゃないか?


稲荷もそう感じたのだろう2人して顔を見合わせたそのときだった。


突然バタンッと音がして、女性へと視線を戻した。


するとさっきまで鼻歌を歌って元気そうだった女性が、その場に倒れこんでいるのだ。


「大丈夫ですか!?」


良介はすぐに書水槽の影から飛び出した。


稲荷も後ろからついてくる。
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