稲荷寺のパラレル少女
効果が出ない
「妹を励ましてもらって、昨日はありがとうございました」


まだ布団の中にいる良介は稲荷の言葉を聞いてはじめて、あのキツネが稲荷の妹だったのだと知った。


「いや、俺は別になにも」


慌てて上半身を起こして答える。


「実は、ここにこうして泊まりに来る人もどんどん減っていて、久しぶりのお客さんなんです。昔はキツネの宴に参加する人もいたんですけど、それもいなくなってしまって……。それで落ち込んでいたところに良介さんが来てくれて、本当にみんな喜んでいるんです」


そういわれても、良介はただ稲荷に連れられてこの世界に来ただけだ。


そう思ったけれど、言葉を飲み込んだ。


「今日は朝から学校へ行って見ようとおもうんだ」


良介は気を取り直して言った。


キツネの宴は確かに楽しいけれど、自分がここへ来た一番の理由を忘れちゃいけない。


「そうですね。そうしてみましょう」


稲荷は背筋を伸ばしてうなづいたのだった。
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