稲荷寺のパラレル少女
靴紐を直している間にまた後ろの女性から文句を言われるかもしれない。


踏まないように気をつけて歩かないといけない。


気をつけて下をみながら歩いていると、膝には昨日できたばかりの傷を治すための絆創膏が見えた。


12月最後の日だった昨日も良介は2人と遊んでいた。


昨日は雪が降ったから、3人で自転車を出して飛行機場へと向かったんだ。


最上稲荷もそうだけれど、飛行機場も3人の遊び場のひとつだった。


雪が降る中を飛び立つ飛行機を見に行こう!


そう言って自転車に飛び乗ったものの、途中の山道で派手にこけてしまったのだ。


そのとき英也と大輝は心配を口にしながらも、顔には笑みを浮かべていた。


自転車でこけてケガをすることは。すでにかっこ悪いことになっていた。


昨日の出来事を思い出していたときだった。


うつむく視界の中に素足が見えて思わず立ち止まった。


すぐに後ろから文句が飛んでくると思ったが、良介の横を女性がなにも言わずに追い越して行った。


人の流れで参道に少し余裕ができていたみたいだ。


良介は誰にも邪魔されず、その素足を不思議な気持ちで見つめた。


触れたらフワリとしていそうな、白い足。


ここまで歩いてきたはずなのに、少しも痛そうじゃない。


その足は境内へ向かう流れとは逆に向いていて、更に良介の目の前にあった。


おかしいな
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