稲荷寺のパラレル少女
☆☆☆

2人で資料を読むこと20分。


良介はようやくあの岩について記載されている本を見つけていた。


「裏鬼門にあるあの岩には、死者の怨念が閉じ込められているみたいだ」


記事を目で追いかけながら良介は言う。


「怨念……そういえば、この町では70年前に大きな自然災害がありました」


「それってもしかして大雨のこと?」


「そうです! それで低い土地は水没してしまい死者が多数でました。それから町は上へ上へと建物を作っていくようになったんです」


「そうだったのか」


大雨で水没する被害は良介の世界でも起こっていた。


良介の世界では死者数20人だったが、記事によるとこっちの世界では500人を超えているらしい。


ちょっとした地形の違いとか、天気の違いでここまでの変化が生じてしまったようだ。


その後の町の発展にも大きな影響を与えたのだろう。


「思えば人々が神事などを信用しなくなったのも、その頃からです。神に祈っても意味がない。そう思われてしまったようです」


稲荷は力なく呟く。


良介はそんな稲荷の手を握り締めた。
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