稲荷寺のパラレル少女
でも足はちゃんとついているみたいだし。


幽霊なんて見たことがないから、実際はこんなものなのかもしれない。


そんな風に思考をめぐらせていたとき、少女が赤い唇を開いた。


なにか言われる!


そう思って背筋が伸びて、体が緊張した。


「来て」


不意に少女が鈴の音のような声で言い、良介の腕を掴んでいた。


掴まれた腕に電流が走るような感覚がした。


でも実際に電流が走ったわけではなく、良介の中にそれほどの衝撃が走ったのだった。


「え、あの……」


咄嗟のことで反応できないままの良介を案内するように歩き出す。


少女の手はとても冷たくて、やはり幽霊なのではないかと、そればかりが気がかりだ。


「ちょっと、待って、うわっ!」


少女はまるでそこに人なんていないかのように、するすると合間を縫って移動する。


良介はそれについていくのがやっとだった。
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