トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜


「せ、専務の瞳…」

俺が機嫌よく笑っていると、突然、さくらが何かを言い出した。
それも俺の目の前に立ち、顔を近づけて。

「専務の瞳…
たまにグリーンに見える時があるんです…
私の気のせいなのかと思っていたけど、ううん、そうじゃないみたい」

さくらは俺の瞳を覗き込む事に夢中になっていて、至近距離に自分の顔を近づけている事に、多分、気付いていない。
こういう事を計算もなしにやっているさくらの天然さに、俺は分かっていながら振り回されてしまう。
俺は、わざと意地悪をした。
そんなに顔を近づけているのなら、キスしたって構わないだろ?
俺はさくらの顔を覆っている巨大なマスクを早業で外し、触れるか触れないかくらいの軽いキスをする。

「そんなに顔を近づけて、俺のキスを待っているみたいだったからさ」

俺は高校生のガキのように憎たらしい笑みを浮かべる。
そして、誰よりもはしゃいでいる俺がいる。さくらにキスをして心が躍っていた。
俺はさくらが仕掛けた巧妙な罠に、自ら飛び込んでしまっているのかもしれない。


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