トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜


清水寺に程近い料亭を、俺は夕食の場に指定した。
この店は、江戸の後期からこの場所で料亭を営んでいた。
いわゆる歴史オタクにはたまらない店だ。
それに、中々、一般の人は利用できない。
一日、数組の予約は、お得意様で一年中埋まっている。

俺は二人より早くに店へ入った。
大人になってこの店を使うのは今日で三回目だ。
子供の頃、母がまだ京都にいた頃は、母方の祖父母が来るたびに家族でここを利用した。
遠い過去の話だけど…

四畳ほどの個室で一人くつろいでいると、女将のゆったりとした話し声が聞こえてきた。
さくらと唱馬を案内している割には、話し過ぎじゃないか?
三人が近づいてくると、その理由が分かった。
歴女のさくらは、興奮状態で女将に質問を浴びせている。
相当、喜んでいるのが分かる。
それもそのはず。そう思って、この由緒ある料亭を選んだのだから。


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