トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜


そんな生ぬるい奇妙な空気感の中で食事は終わり、俺達三人は店を出ると二寧坂を歩き始めた。
暗くなってきたけれど、高台寺へと向かう情緒ある町並みは散策するにはちょうどいい。

「もう少し歩いたところにタクシーを拾える場所があるから、そこまで歩こう」

俺は一人で先を歩くさくらの背中に向かってそう言った。
さくらは本当に京都の街が好きらしい。
この月明かりと街並みだけで幕末の京都にタイムスリップしたような、そんな映画みたいな話し、そして、その物語の主人公のような動きをして楽しんでいる。
そんな自分一人の世界に浸っているさくらを見守りながら、唱馬は俺の方を見た。

「慈恩…
さっき言った事は本当の事だから。忘れないで」

俺は可愛い弟を見るような瞳で、唱馬を見つめる。


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