トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜
慈恩の艶めく本能
慈恩はフリージアから外へ出ると、あまりの苛立ちにこめかみを強く抑えた。
また頭痛が始まりそうだ…
さくらの苦しそうな表情に、少なからずショックを受けた。
苦しむなんて思ってもいなかったし、唱馬とは簡単に関係を断ち切れると思っていた。
でも、さくらは、唱馬と別れられないと言った。
付き合いはじめのカップルにありがちな依存症状に違いない。
慈恩は車に乗り込むと、エンジンのキーボタンをゆっくり押した。
今、俺がしたい事。
それは唱馬と話がしたい。
とりあえず、自分が向かう先を決める。
唱馬に限らず、京極家の人間がひいきにしている料亭がある。
親戚や大切なお客様を接待する時は必ずその店だ。
唱馬の父親もこの馨月亭の中心に位置する人間で、唱馬だってそのイズムをしっかりと受け継いでいる。
そして、その店に行くには次の交差点を左折しなければならない。
でも、俺は、わざとその交差点を直進した。
唱馬と話がしたいのなら、さくらのマンションの近くで待ち伏せした方がいい。