トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜
でも、俺の考えは、遅番のシフトの時くらい、敷地内を通る事を認めさせてあげたい。
だって、危ないだろ? 若い女の子が暗い夜道を帰るなんて。
そんな事をぼんやり考えていると、大きなマスクをしたさくらが小走りで通り過ぎた。
俺は声を掛けずに、静かに見守った。
今日の俺の目的はさくらに会う事ではなく、唱馬に会う事だから。
さくらを目で見送った後、残っていたコーヒーを飲み干してリクライニングシートを少し倒す。
もう一度、自分の今やろうとしている事を冷静に考えてみよう。
自己嫌悪に陥らない程度に。
すると、誰かが運転席側の窓をトントンと叩いた。
俺はすぐにその方向へ目を向けて、苦笑いをした。
だって、大きなマスクをしたさくらが、目を丸くして車の中を覗き込んでいる。
俺はドアを開け、外へ出た。
「専務、どうしたんですか?
今、ここを通った時に何となくこの車が目に入って。
念のため引き返して見に来たら、やっぱり専務の車だった」
「ばれた?」