トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜


俺は開き直って笑うしかない。
さくらも笑っている。訳も分からずに。

「別に待ち伏せしてたとか、そんなんじゃないんだ。
家に帰る途中で、コンビニに寄る用事があって。
喉が渇いてたから、コーヒー買って車の中で飲んでた。
さくら達の夜のシフトの日ってこんなに遅いんだな、なんて思いながら」

噓じゃない程度に言い訳をして、爽やかに笑って見せた。
単純で気のいいさくらは、もう完全に騙されている。

「今日は、まだ、早い方なんですよ。
仕事の後にちょっとでもお喋りしてたら、夜中の一時近くになる事もあります」

「さっさと帰らなきゃダメだよ。
こんな時間にウロウロ歩くのは、女の子には危険過ぎる。
というか、ちょっと、寮の人達の決まりを改善しよう。
敷地内の移動ができるように、俺の方で何とかする。
そのくだらない決まり事なんてどんどん変えていかなきゃ」

さくらはうんうんと大きく頷いている。
よっぽどこの決まりに不満があったのだろう。
そんなさくらは、夜のひんやりとした空気にぶるっと体を震わせる。
俺は寒そうにしているさくらを車の中に誘った。


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