トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜
「この場所は先代が切り開いた場所だけど、このスペースを一歩外へ出たら手付かずの自然の脅威がこういう無知識な人間を待ち構えてる。
って、俺は小さな頃に言われ続けた。
あっちの方に行こう。
十メートル程行ったところに大きな紅葉の木があるはずだから」
慈恩はそう言うと、私の持っているパンパンに膨らんだビニール袋をひょいと持ち上げた。
そして、反対側の右手を私に差し出す。
「ここからの道は、人が通るにはちょっと危ないから」
私が手を差し出す事に躊躇していると、慈恩はクスッと笑って私の軍手の手をしっかりと握ってくれた。
「ちょっとチクチクする」
「ご、ごめんんさい」
慈恩はもう一度クスッと笑った。
そして、慈恩はさりげなく私を引き寄せて、狭い道を二人はくっついて歩いた。
「慈恩様は…
本当に親切なのですね」
私はまた紅葉のように真っ赤になっている。
手汗も酷い。でも、軍手が功を奏している。