トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜
フリージアと呼ばれている洋館は明治時代に建てられた古い建物で、この何十年もの間、何度も何度も改修工事をしてきた。
私はそんな情緒溢れるフリージアが大好きだった。
でも、今はそんな事はどうでもいい。
私はフロントに顔を出すと、環奈ちゃんと他のスタッフに丁寧に謝罪をした。そして、簡単に事情を説明して、その御曹司の居場所を教えてもらった。
三階の図書室にいるとの事。私は猛ダッシュで図書室まで急いだ。
フリージアの図書室に入ると、レトロな雰囲気が長い年月を思い出せてくれる。
壁一面に並んだ様々なたくさんの本は、普段本を読まない私の心まで優しく癒してくれた。
そして、その御曹司は、図書室の奥にあるサロンのソファに腰かけていた。
誰かと話しているわけでもなく、ぼんやりと窓から差し込む柔らかい光の方を眺めている。
スタッフと同じユニフォームの黒いスーツを身につけたその男は、誰かの気配に気が付くとゆっくりとこちらへ振り返った。
「高梨さくらか?」
「は、はい!」