トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜
「入社… 間もない頃、一度だけ…」
その御曹司は呆れたように天井を眺め、大げさにため息をついた。
「俺の名前は京極慈恩。
未来の馨月亭を背負って立つ人間。
遅刻とか寝坊とか、本来だったら即クビにしたいところなんだけど…」
私は、さっきまでの浮かれた気分はどこかへ飛んでしまった。
クビになるなんて絶対に嫌だ。
だって、このフリージアを愛して止まないのに…
「今日は大目に見てやる。
それは、その侍みたいなヘアスタイルが面白いから。
女子でその勇ましい髪型は中々いない。
一瞬、プロレスラーかと思ったよ。
ちなみに、俺は大のプロレス好き」
その慈恩という男は、舐め回すように私の髪を見ている。
そんな注目を浴びるような髪型じゃないのが、逆に恥ずかしい。
「ふ~ん、カチカチに固めて、ひと昔前のオールバックっていうやつだな。
それはそれで俺的には嫌いじゃないけど、でも、その髪型は、このフリージアにはそぐわない。
もう少しふんわりとした柔らかい雰囲気にまとめる事、いいな?」