トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜


「あ、あの…」

俺はこの小さなソファでどれくらい寝ていたのだろう。
さっきの二宮さんとは違う声が俺を呼んでいる。
ゆっくりと目を開けると、直立不動のさくらが立っていた。
それも巨大なマスクをして。
俺はソファに座り直すと、じっくりとさくらを観察した。
でも、巨大なマスクが邪魔をして、さくらの顔の状態は全く分からない。

「どう? 調子は?」

「ちょ、調子ですか? 調子はいいです」

さくらは目が泳いでいる。
俺の事が怖いのは分かるが、それにしても挙動が酷すぎる。

「顔のだよ、お肌は大丈夫?」

さくらは、今、やっと理解した顔をしている。
頭を横に振ったり上下に動かしたりと意味不明な動きがやたらに多過ぎて、見ている俺も訳が分からなくなってきた。

「こっちに来て」

俺はそう言うと、ソファの隣のスペースをトントンと叩いた。

「ちょっとここに座って」

さくらはハッとした顔をして、三歩進んで二歩下がるそんな状態を続けている。
俺は待ちきれなくて、さくらの右手を引っ張って隣に座らせた。


< 87 / 180 >

この作品をシェア

pagetop