トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜
魂が抜けたみたいに身体が動かない私は、図書室のガラス戸棚に映る自分の姿を凝視した。
この時間がないために生み出されたズボラの極みの一つ縛りの髪型が、私に恋を引き寄せた。
私は無意識に自分の頭を撫でている。
でも、ジェルのせいでガチガチに固まっているため手のひらが痛くなる。
それでも、こんなイケてないこの髪型を、慈恩は好きだと言ってくれた。
私は大きく深呼吸をした。
結ばれるなんて絶対にあり得ないと分かっているから、何だか気楽に恋ができそう。
そんな事を考えながら、一階のフロントへ急いだ。
私はフロントへ猛ダッシュで戻ると、すぐにカウンター担当の二宮さんと代わった。
「二宮さん、奥でコーヒーでも飲んできてくださいね。
私、今日はここで頑張りますから」
「そんな遅刻の事は気にしないでいいんだよ。
立ちっぱなしはきついから、ちゃんと順番でやろう」
二宮さんは本当に優しい人。
三十代半ばで綺麗な奥さんと可愛いお子さんが二人いる、幸せの象徴のような人。
二宮さんの事は人間として大好きだ。
恋愛対象とは違うけれど。
私は穏やかな気持ちでお辞儀をした。
大好きなフリージアのスタッフに感謝しながら。