トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜
俺が何も言えずに黙っていると、もう一度、さくらは大きく深呼吸をした。
そして、ゆっくりと頭を下げ、そそくさとその場を立ち去ろうとする。
「ちょっと待って!」
俺の声に驚いたさくらは、すぐに後ろを振り向いた。
「ねえ、彼氏とかいたのか?」
いや、別にいいじゃないか…
いい大人だし、俺にとって魅力的なのだから他の男も黙っていないだろう。
俺はクラクラする頭を冷静にするために、そんな当たり前の事を自分に言い聞かせる。
さくらはしばらく黙っていた。
そして、涙をいっぱい溜めた目で俺を見つめる。
その涙の理由は何だ?
今までの人生、色々な女性と付き合ってきた。
多分、本気で付き合った女性だって一人か二人はいる。
だけど、さくらの女心は何ひとつ分からない。
図書館の隅でこんなドラマチックな展開が待ち構えているなんて、夢にも思わなかった。
「私… 唱馬さんと… 結ばれました…
ご、ごめんなさい」
そんな強烈な捨て台詞だけを残して、さくらはあっという間に居なくなった。