トライアングル的極上恋愛〜優しい沼に嵌ってもいいですか?〜


思いのほか、会議に時間がかかってしまい、フリージアへ行くのが遅くなった。
今日のさくらのシフトはちゃんと調べてある。
まだ、フロントにいるはずだ。
俺は早歩きでフリージアへ向かった。
そして、あえて、お客様用の正面玄関から中へ入った。
フリージアに関しては、老朽化の進行具合を心配して、役員によっては取り壊しの案を出す者もいる。
俺自身、その案だけは避けたい。
そういう観点からも様々なシチュエーションを想定して、客目線でフリージアを感じたかった。
フリージアの重厚な扉を開けると、すぐにさくらの姿が目に入った。
人一倍大きなマスクがかなり目立っている。
他のスタッフは、俺に気が付くとソワソワと動き出す。
まるで、歓迎されない苦手な大魔王がきたみたいに、厳しい顔をして。

「専務、鰺坂を呼んできましょうか?」

そう言って、声をかけてくれたのは二宮さんだった。
二宮さんは、俺が専務に昇格した事をちゃんと知っている。
馨月亭グループのホームページにちゃんと目を通している証拠だ。

「鰺坂さん? いいよ。
それより、奥の休憩室に高梨さんを呼んでくれる?」


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