小さな願いのセレナーデ
「あの、どういうこと?」
「「聞いてない?」」

二人が同時にそう言うもんだから、思わず吹き出してしまった。
私とは対照的に、二人の空気は微妙だが。
何か私に伝わっていないことがあるらしい。


「一応さ来月にね、ここの下の方の階が空くから、私と碧維はそこで暮らす予定でいるの。ちょうど碧維も二歳になるから、昂志さんが幼稚園に転園させる段取りもしてるのよ」
「幼稚園?」
「うん、保育園より幼稚園に入れた方がいいんじゃないかって。この辺は二歳なってすぐから受け入れてる所が多いんだけど、なかなか決められてないみたいで……私は別に何処でもいいんだけど」

ちらっと晶葉先生がお兄ちゃんを見ると、「早期教育は重大だぞ」と偉そうにぶんぞりかえっていた。

つまりまぁ、二人がこっちに引っ越してくるのは分かったけれど……。


「あのさ」
「何?」
「ここで、暮らさないの?」

ここは一応社宅の扱いだけど、実質お兄ちゃんの家。
何で近くに居るのに…家族なのに、二人と離れる必要はあるんだろうか。
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