小さな願いのセレナーデ
「だって部屋数まだあるし、そもそも親が使ってた部屋だって客間だって空いてるし、私だって碧維の相手はできるし……でも、やっぱ私が居ると嫌かな。私が出てった方がいいのかな………」

普通に考えて新婚家庭に小姑付き。
世の中じゃ一番嫌がられる物件だろう。


「瑛実」
「何?」
「逆にお前はいいのか?騒がしいぞ子供は」
「全然大丈夫だけど……?何で……?」

子供が騒がしいなんて当たり前だし、むしろこの家は碧維が居ると賑やかになる。
私はそんな『賑やかな家』というものを、産まれてから経験したことがない。一度は経験してみたい、憧れなのだ。


「何ならすぐに引っ越してきてくれてもいいし、晶葉先生が居たら、いつでも演奏聞いて貰えるし、色々意見聞きにいけるし……でもあれかな。晶葉先生は『時間外の指導はダメ』とか決まりがあるのかな。でもそうしたら音楽教室の方を辞めて……ってえっとそもそも保護者と恋愛っていいんだっけ……?」

なんだか色々と言ってるうちによくわからないことになってきて、頭が混乱する。
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