No rain,No rainbow
1缶をカゴに入れて、私もおんなじの飲みたいなぁ。

2缶めに手を伸ばした。

そのタイミングで、横から伸びてきた手が同じ缶を掴んだ。

「あ、すみませ…ん…?」

謝りかけて、一瞬触れた指先はぬくい温度で。

「ひとりで呑むなんてずるいなぁ。新しいのは一緒に呑みたいのに」

聞き慣れた声に、瞬間、体の血が沸騰する。

聞きたかった声が、急に耳元で響いて、嬉しさと恥ずかしさが混じって、顔が赤いのが自分でもわかる。

ずっとずっと、仕事中もスーパーに入ってからも、もっと言ってしまえば、律さんが朝キスをくれてからずっと、ずっと考えていたのは律さんのことで。

会えないと思っていたのに、急に目の前に現れるなんて反則、だ。




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