No rain,No rainbow
「ただいま」

相変わらずの、耳元の囁きに、まだ振り返ることができない。

後ろから、頬と頬が触れる距離で、囁くのは余裕の顔をした律さんで。

この距離じゃ、頬の赤さを隠すことも出来ずに視線を右往左往させる私。

「…おかえり…なさい…あ、の、律さん、防犯カメラはいいんですか?」

"防犯カメラがなかったらキス、してるところです"

囁かれたあの日を思い出して言ってみる。

と…、

ふいに頬に落とされたのは、リップノイズつきのくちづけ。

「…な…ッ…?!」

言葉にならない私に、

「付き合ってるんだから、いいでしょう?これはオレの特権、です」

相変わらずの、余裕の笑み。



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