No rain,No rainbow
「…律、さん…」

呼び掛けて、言葉はそこで途切れた。

「…詩、さん…」

同じように、わたしの名前を呼んでくれる律さんに。

「律さん。どんな理由があっても、どんな過去があっても、律さんは律さんです」

これからもずっと、変わることなく、律さんが大切で大好きです。

それだけは、何があっても変わることがない事実です。

律さんの両手を私の両手で包んだ。

驚くほどに、冷たい手のひら。

暖めたくて、息を吹きかけて必死にさすった。

「…あな…たは、…優しい、です」

この両手に、どんな秘密があろうとも、何があったとしても、私は変わらずに暖めつづける。

いつもぬくもりをくれるこの両手を、絶対に離したりなんか、しない。




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