No rain,No rainbow
開いたドア。

もう一度、キスをしながら屋上のボタンを押した律さん。

ゆっくりと、ドアが閉まる。

「ふたりきりで、どこまでもいきましょう」

そのいざないは、拒否しがたくて。

上昇する小さな部屋の中。

上がる体温や、息が整うのを待たずに重ねられるキス。

なんどもなんども。

「…り…つ、さ…」

「…そんな目で、下から見つめないで…」

欲情に満ちた律さんの声音すら、嬉しくて。

「…早く、帰りましょう」

「…そうしましょう」

意見があって、やっと降りたエレベーター。

手を繋いで、足早に闇夜の中を歩き出す。

「あ!防犯カメラ、ついてましたよ?エレベーターの中」

焦って、律さんに言ったけれど。

「見せつけて、やればいいでしょう?」

にやりと笑う、愛おしいひと。

闇夜に溶けてしまおう、ふたり、いっしょに。




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