発作でさえも、
「やっぱりね」


ドアを開いたその先にいたのは、会いたくて会いたくて堪らなかった朝里くんで。


「なんで…?」

瑞果(みずか)が呼んでるような気がしたから」



朝里くんに会えば治まると思っていた発作は治らない。きゅうっと、胸が苦しいくらいに締め付けられる。でもさっきまで感じていた張り裂けそうな苦しみじゃない。甘くてじんわり痺れるような感覚だった。


「とりあえず部屋上がるよ」


そう言うなり状況が飲み込めてない私の横を欠伸を零しながら通り過ぎて行く。そしてそのままずかずかと私のベッドまで進んだかと思えば、シングルベッドの壁際のスペースを空けて横になる。



「え、朝里くん?どうしたの、」



まさか虫が退治できなくて家にいられないから私の家に来たとかだったらどうしよう。

飄々とした朝里くんの表情からは真意が読み取れない。
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