後味も甘く彩る
「なに?そんなに見つめて」
「……いや、眠そうだなあって思っただけだよ」
盗み見ていたつもりが、完全にバレてしまっていたらしい。
本当は瞳が綺麗だな、と思っていたけれど、前に一度同じようなことを言ったときに、「うん、よく言われる」とどうでも良さそうに返されたのを思い出して、とっさに誤魔化した。
才原くんは案外、自分の魅力に無頓着だ。
「ん、ねむい。6限中途半端に寝てたから」
「クールミントガムあるけどいる?」
「いらないです」
「そうですか……」
せっかく差し出したガムをピシャリと拒まれて、持て余したそれをそっとポケットにしまいなおした。なんだろう、この私も一緒に断られてしまったような感覚は。
僅かに落ち込んでいると、「だって、」という声がして顔を上げる。
「せんぱいの持ってるガムってからいもん」
うげぇ、とでもいうような顔を見せられて、思わず苦笑する。たぶん才原くんってフリスクとかも無理なタイプだろうな。私も好んで食べているわけではないけれど。