後味も甘く彩る

「まあ眠気覚まし用だからね」

「もう、そうやってすぐ睡眠時間削ろうとするのだめです」


ほら。くま、できてますよ。

急に顔を近づけたかと思えば、まじまじと真顔で私の顔、というか目元を見つめてくる。その視線にいたたまれなくなって、そろっと顔を背けようとすれば、むぎゅ、と頬を掴まれて逃げ道をなくされた。



「せんぱいって、すぐ逃げますよね」

「な、なんのことですか」

「すぐ目、逸らすでしょ。だからつまんない」



だってそれは、才原くんの瞳があまりに綺麗だから。その瞳につかまってしまうと、こころもからだも雁字搦めになってしまう気がする。一方的に見つめることはできるのに、才原くんも私を見つめているとわかると、途端に見ることができなくなってしまうんだ。

こんなこと言ってしまえば「意識し過ぎ」って思われそうだから、絶対に言わないけど。



「『つまんない』って言われても、そもそも私才原くんに構ってる時間ないから。っていうか手!離して!」

「えー、せんぱいのほっぺた気持ちいいもん。ふにふにしてる」

「は!な!し!て!」

「……ちぇ。しょうがないな」



あれ。なんで私が駄々こねたみたいになってるんだろう。私って才原くんより年上のはずだよね?と考えていれば、パッ、と頬に触れていた手がようやく離れていった。バレないようにホッと安堵の息を吐く。まったく、からかわれるこっちの身にもなってほしい。
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