愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「どうして雀躍はここに来たらダメなんですか?」
時親様はここに雀躍が来ることをあまりよく思ってないような感じだけど、その理由がよくわからない。
雀躍が前に話をしていたお母さんとの話にちょっと関係あるのかな。
でもそれでも雀躍がここに来てはいけないという理由とは繋がらない。
「それは・・・いずれ、お話ししましょう」
時親様はそう言った。
あまり詮索しない方がいいのかもしれないな、そう思って私もそれ以上聞くことはやめた。
「紫乃、それは・・・?」
時親様が私の手の中にあった桜の花びらを指さして尋ねる。
「これですか?」
私は簀子の所まで出て、その不思議な桜の花びらを時親様に渡した。
「あのときの、清原昌宗様とお姫様の・・・、花吹雪で私のところまで飛んできた花びらです。
しおれないでずっときれいなままだから、なんとなく時親様が持っていた方がいいのかなってさっきも思っていたんですけど・・・」
時親様はその花びらをじっと見つめ
「桜、ですか・・・。これは・・・」
そう言ったきりしばらく黙ってしまった。
「時親様・・・?」
私の呼び掛けに彼はああ、と顔を上げて私を見た。