愛しの君がもうすぐここにやってくる。

そして静まりかえった森の中、聞えてくる話し声のほうに向かってゆっくりと歩き出す。
繋がれた手のほう、身体半分が自分のものでないみたいに熱くなっていっている。
そんなことを思いながら。


やっとの思いで2人の姿が確認できるところまでやってきた。
私たちは彼女たちに見つからないように大きな木の陰に隠れてそっと様子をうかがう。

よく見ると、あれは魔法使いのおばあさんとシンデレラ・・・?
ちょうど魔法をかけてもらう場面なんだろうか。
でも、なんかちょっと様子が変?言い合っているようにも見えるけど。

「なんだか・・・」
「どうかしたのですか?」
時親様が私に尋ねる。

「あ、えっと、なんか物語の進み方がおかしくて・・・」
「おかしいとは?」
私は彼にシンデレラの話を一通り説明する。

私たちが今出会っている場面はシンデレラが魔法使いに魔法をかけてもらって舞踏会に行こうとしている場面。

「とすると、あの老婆も私と同じ陰陽師なのか?
異国の陰陽師か?」
腕を組んで言った。

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