愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「っていうか、そんなことより・・・」
「ああ、そうですね。
私はここのことについてはよくわかっていないので紫乃に任せましょう」
いつも私、助けてもらっているだけに、そう言ってもらえるとちょっと得意げになってしまう。
「お願いだから、私の魔法でドレス姿になれるから、それで舞踏会に行ってちょうだい」
魔法使いのおばあさんは必死になってシンデレラに頼んでいるけれど、彼女は頑なにそれを拒否する。
「いいえ、私は王子様にふさわしくありません。
だから行きたくありません」
え?
なに言ってるの、このひと。
ここは喜んで行くんじゃないの?
そんなこと言っていたら話がおかしくなってしまう。
「そろそろ失礼します。
もう帰らないと。
掃除も終わってないし、みんなが家に帰ってくる前に私も帰らないと叱られてしまいます」
彼女はヨレヨレで埃が付いた服を両手でパンパンと払いながら答える。
「困ったわねぇ、無理かしらねぇ」
ため息をつく魔法使いのおばあさん、このままだと説得するのを諦めてしまいそうだ。