愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「もう説得している時間ももったいないから、さっさと魔法をかけちゃってください」
私は魔法使いのおばあさんにお願いする。
「あっ、ええ、そうね」
そう言っておばあさんは呪文を唱えると、シンデレラはまばゆい光に包まれたかと思うとあっという間にドレス姿に変わった。
「まあ・・・、すごい・・・」
シンデレラは興奮したように自分のドレスの裾を触る。
「でも・・・素敵なドレスだけど、私は・・・行きたく・・・」
まだそんなこと言ってる・・・。
その間も魔法使いのおばあさんはかぼちゃを馬車に変えたり、はつかねずみを馬に変えたりと次々と魔法をかけていく。
「すばらしい呪詛ですね・・・」
時親様はそう言って感心する。
私はシンデレラの近くまで行って
「大丈夫、ちょっとだけ、お願い、顔出してくるだけでいいから」
そう懇願してシンデレラを無理やり馬車に押し込む。
「ちょ、待って」
往生際が悪く、まだ乗ることを拒否しようとするシンデレラに気付いた時親様が呪文を唱えると一瞬彼女の気が緩む。
「さあ、紫乃、今のうちに」
私がシンデレラの背中を押し、それと同時に時親様がドアを閉めて馬車は走り出した。