愛しの君がもうすぐここにやってくる。

「はあ、やっと行ってくれたけど、なんとなく気になるわねぇ」
馬車を見送りながら魔法使いのおばあさんはため息をつき心配そうに言った。

「そうですね。
馬車に乗って行ったのは行ったけれどその先が・・・」
ちゃんと王子様と出会ってくれるのだろうか。
私もちゃんと物語が予定通りにすすむのか気になった。

「あ、そうだ。
ふたりであとを付いて行ってくれない?」
魔法使いのおばあさんはぽんと手を叩き私たちに言った。

え?どういう意味?
私がその言葉の理解をしていないうちに魔法使いのおばあさんは時親様と私に向かって杖を振り上げた。
シンデレラの時と同じような大きな光に包まれたかと思うと、
私たちの服装も一瞬にして変わってしまった。

「うわ、なにこれ?」

時親様は濃いグレーのアビ・ア・ラ・フランセーズのスーツ、
私は裾の大きく広がったクリーム色のドレス姿になっていた。

「うん、あなたたち、背が高いからとても似合うわね。
これなら怪しまれずに舞踏会に入り込むことができるわ。
ちゃんとシンデレラを見届けてきてちょうだい。
彼女と同じように0時に魔法は解けてしまうから気をつけてね」

そして今度は私たちが魔法使いのおばあさんが用意してくれた馬車に乗り、先に走るシンデレラの乗る馬車を追いかける。

遠くに魔法使いのおばあさんの声が聞える。
「お願いね、いってらっしゃい!」





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