愛しの君がもうすぐここにやってくる。
なんだか話が変な方向に向かっていっている気もするけれど。
馬車の中で向かい合わせに座る私たち。
いつも時親様は当たり前だけど束帯や直衣姿ばかりだから、なんだか向かい側に座っている彼が違うひとに見える・・・。
「どうにも・・・こういう衣装は初めてだから、なんとも」
時親様は袖口を引っ張ったり、背中を動かしたり。
初めての洋装に少し戸惑っているように見えた。
当たり前だけど。
私もまあ、普段に洋服着ているって言ってもこういうロココ調のドレスなんていうのは初めてだからある意味、時親様と同じだ。
本の中に迷い込んだ驚きもあるけれど、でも少し楽しい。
きっと時親様が一緒だから、不安もあまり感じてはいないのだろう。
「このような話の進み方で大丈夫なのでしょうか」
時親様が確かめるように私に聞いた。
あ、そうだった。
シンデレラを追いかけて王子様と会ってもらうためにこうして馬車に乗ったんだ。
大事なこと、忘れかけていた。
それくらいに私、浮かれている。