愛しの君がもうすぐここにやってくる。
「はい・・・シンデレラと王子様が出会ってガラスの靴を置いてくることができれば」
浮かれていること、気付かれたくなくて視線をそらす。
そのとき、時親様の白い革の手袋越しにわかる、頼りがいのある大きくて厚い手が目に入った。
いつも袖の中に手が隠れていて指先くらいしか見たことなかったけれど、今こうして初めて手全体を見たというだけでどきどきしてしまう。
いわれようのない緊張感、なんなんだ、ほんとに自分でも嫌になるくらい。
緊張のせいなのか、なんなのか。
顔はかあっと熱くなっているのに、手の末端が冷えている感じ。
「どうしました?」
聞えた声にはっとする。
「あ、いえ、大丈夫です、元気ですよ」
私がそう答えると同時にそっと私の両手を重ねるようにして彼の手が触れる。
うわ。
「冷たいですね」
彼の両手で包まれた自分の手を見つめる。
彼の手を見て緊張して冷たくなっていったはずの私の手が、その彼の手が触れることで少しずつ氷が溶けていくように生気を取り戻す。
「すみません・・・」
「なにを謝るのですか?」
「あ、いえ、なんとなく・・・すみません」
「また謝る・・・」
時親様が穏やかな表情で私を見る。
そういうの、ほんとに心臓が、ヤバい、です。