愛しの君がもうすぐここにやってくる。
わざとらしくならないように舞踏会に紛れ込み、少し離れたところから2人を見つめる。
「なかなかふたり、近づきませんね・・・」
時親様がふたりを交合に見て言った。
さっきからシンデレラと王子様と見ているけれど、時親様の言うとおり、一向にふたりは近づこうとしない。
というかシンデレラが壁のところで隠れるように隅の方でじっとしている。
時間だけが過ぎていく。
「・・・仕方ないですね、紫乃、できますか?」
「え?なにが?」
「あのように皆がやっていることと同じ事」
そう言って時親様は演奏に合わせて踊っているひとたちを指さす。
は?踊るっていうこと?
私はまだ学校の授業でダンスはやったことあるけれど、でもここのみんなが踊っているのはそんなレベルのものでもない。
それより時親様は私よりダンスから離れたところにいるのに踊れるの?
私の頭の中がクエスチョンマークだらけになって躊躇していると時親様は私の手を取った。
「大丈夫ですよ。
見ていたらだいたい要領は掴めました。
私の動きに合わせてください」
え、ちょっと待って、どういうこと?
彼は私の手を取った瞬間から軽やかに音楽に合わせて踊り始める。