愛しの君がもうすぐここにやってくる。
わ、うそ。
時親様のリードで私たちは自然に踊るひとたちの中に違和感なく入っていく。
重ねた手。
そしてなにより顔が近いし。
ヤバい、落ち着いていた熱がまたでそう。
「どうしましたか?
顔が赤くなっていますが、また体調が悪くなってこられたのでしょうか」
いや、違うから。
「全部、アンタのせいなんやからねっ!」って言えたらならどんなに楽だろう。
私はただ無言のまま左右に首を振る。
「えっと、シンデレラのいるところまで行ってみましょうか・・・」
私はできるだけ時親様が自分の視界に入らないように、彼から目を逸らして周りを見渡す。
と思ったらさっき確認した場所からどこか移動したのか姿が見えなくなった。
どこに行ったんだ?
あのひと、違うな。
こっち・・・、違った。
ひとりでいる女性をゆっくりと確認していく。
「時親様、あそこ・・・」
私が向いている方向を彼も見つめる。
「ああ、そうですね」
さっきいた隅の壁際からもっと目立たないテラス近くで柱の陰に隠れてぼんやりと立っているシンデレラがいた。
私たちはわざとらしくならないように少しずつ彼女の側に近づく。