愛しの君がもうすぐここにやってくる。
うつむいていたシンデレラが近づいてきた私たちに気付き、ゆっくりと顔をあげる。
「わっ、ちょっと、なにをしに来たんですか」
そしてびっくりした表情で聞いてきた。
「そんなこと、どうでもいいじゃないですか。
それよりせっかくここまで来たのにどうして王子様のところに行かないんですか」
シンデレラは曇った表情を見せ、唇を噛みしめながら消え入るような小さな声で話し始めた。
「・・・そりゃ、私だって本当は・・・王子様に憧れて・・・。
でもみんな私には相応しくないと、私がなにも言っていないのに否定され続けて・・・。
そしたらもう、私なんてって思って、なんだかもう自分で自分の気持ちもわからなくなってしまって・・・。
だからもう今更」
そして言い終わるとうつむいてしまう。
なんて悲観的。
みんなに言われて自分の気持ちもわからなくなって、ってそんなのあり?
「な・・・、なんですか、それ。
思うのはそのひとの自由でしょう?」
言いながらシンデレラの言い分に腹が立ってきた。
「他人にどう思われても言われても好きなんだったら、それはそれでいいじゃないですか。
周りのひとも環境も関係ない、自分が好きならそれでいいじゃないですか」
あれ、これって。
自分のこと棚に上げて、シンデレラに言っていることなのに全部自分に返ってくる。
言っていて苦しくなってきた。
シンデレラには偉そうに言っておいて、自分は言っていることと逆の気持ちを抱いている。
矛盾している自分が嫌になり黙り込んでしまう。