愛しの君がもうすぐここにやってくる。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「うまくいったようですね、おふたりともありがとう」
魔法使いのおばあさんは、元に戻ってきた私たちに労いの言葉をかける。

それと同時に魔法は解けて、時親様は直衣姿、私は袿姿に戻った。
ほんとに少しの時間だったけれど、
ちょっと焦ったり、緊張したりだったけれど、
不謹慎かもしれないけれど、
一緒に舞踏会に行けたこと、楽しかった。
でもこれはだれにも言えないから、ずっとこころの奥にしまっておこう。

と同時に、私たちはこれからどうやったらこの本の世界から抜けられるのだろう。
物語が元に戻り、私たちも元の姿に戻ったことで、ここが本の中の世界であることを改めて思う。

「心配はいりませんよ、紫乃。
私の気の緩みからこうなってしまっただけなので。
きちんと戻ることはできます」

なにも言ってないのに。
なんでわかるの。







< 121 / 212 >

この作品をシェア

pagetop